Maestro
 しばらく前、職場の近くにある初めてのレストランで昼食をとったとき、メニューを見たら、コーヒーの欄に「アメリカン」を見つけた。

 子どものころは、どの喫茶店のメニューにも「アメリカン」があった。しかし、セルフ方式のコーヒーショップが一般的になってからは、コーヒー専門店でも「アメリカン」にお目にかからなくなった。

 (この話は、「アメリカン」について何も知らなければ、まったく意味不明なのだが、)昭和の時代には、高齢者を中心として、「アメリカンとは薄めたコーヒーのことである」という誤解が支配的だった。つまり、お茶が濃いときにお湯で割るのと同じ要領で、濃いコーヒーをお湯で割ったのが「アメリカン」であると考えられていたのである。

 たしかに、インスタントコーヒーの場合、濃さはお湯の量で調節することがあるかも知れない。しかし、一般的な(つまりインスタントではない)コーヒーをお湯で割ることはしないはずである。もしコーヒーをお湯で割ったら、それは、「アメリカン」ではなく、単なる「コーヒーのお湯割り」にすぎない。

 しかし、もちろん、「アメリカンとは薄めたコーヒーである」という誤解には、それなりの理由がある。というのも、アメリカンの色は、普通のコーヒーに比べると薄い――つまり、透明度が高い――のである。もちろん、それは、お湯で割られたからではない。

 「アメリカン」の「アメリカン」たる所以は、豆の焙煎にある。これを猛烈に大雑把に図示すると、次のようになる。

19387595.png

 浅煎りの豆で淹れたコーヒーの色は薄く、反対に、深煎りの豆で淹れると濃くなる。深く焙煎するほどコーヒー豆が黒くなり、油脂が浮き出してくるからである。また、豆が浅煎りであるほど酸味が強くなり、豆が深煎りになるとともに、苦味が強くなる。

 もっとも深煎りのコーヒーはイタリアン、その手前がフレンチと言われる。ヨーロッパは深煎り好みなのである。そして、その対極にある超浅煎りのコーヒーが「アメリカン」である。一般に「ブレンドコーヒー」などと呼ばれるコーヒーは、複数の銘柄の豆をそれぞれ独自の割合で混ぜたもので、超浅煎りと超深煎りの中間にある。普通に喫茶店で出てくるコーヒーはこれに当たる。

 私自身もコーヒーについては初心者だが、このような大雑把な知識を踏み台にして、たとえば次のような入門書に進むのがよいと思う。外でコーヒーを飲むたびに味の違いがわかってきて、何となく楽しくなる。


 
 また、次のようなマニアックな入門書も面白く読めると思う。