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 昨日、仕事が正午で終わり、時間があったため、竹芝のGallery916で開催中の写真展に行った。(この写真展については、いずれ書くかも知れない。)

 ところで、Gallery916というのは、ゆりかもめの竹芝駅前の倉庫の6階にある。そこで、写真展に行ったあと、建設中の豊洲市場がこの沿線にあることに思いいたり、そのままゆりかもめに乗った。私は、東京生まれで東京育ちであるが、湾岸エリアに足を踏み入れることは滅多になく、ゆりかもめに乗ったのは昨日が初めてである。


Yurikamome route map.gif
GFDL, Link


 ゆりかもめの路線は、上の地図のように、狭い範囲で曲がりくねっており、そのせいで、ずっと乗っていると、同じ空間を少しずつ違う角度から何度も見ることになる。また、乗ってから気づいたのだが、新橋駅と終点の豊洲駅のあいだの直線距離は大したことがない。したがって、豊洲に行くために新橋からゆりかもめに乗ると遠回りになるはずである。

 ところで、豊洲市場の最寄り駅は、終点の豊洲駅ではなく、2つ手前の市場前駅である。そして、この市場前駅を降りると、降りたところがもう豊洲市場である。

 駅の改札を出て地上に降りると、すぐ目の前にあるのが青果の市場であり、都道484号線に沿って南西方向に進み、交差点を渡ると、そこから先は、道路の両側がすべて水産物関連の施設になっている。今は、それぞれの入口にガードマンが立ち、工事関係の車輌がときどき出入りする程度で、駅の周辺に人気はほとんどない。(そもそも、市場前駅でゆりかもめを降りたのは、私ひとりだった。)

 私は、駅を降りてから、市場の中央を通る都道484号線を歩いた。都道が東雲運河を渡るところに「富士見橋」という名の橋があり、駅を出てからこの橋までが豊洲市場になっている。ただ、このエリアは、少なくとも歩行者の目には、おそろしく非日常的、非東京的、非人間的な空間と映る。午後遅かったせいもあるのであろうが、歩いていて、私は少し心細くなった。

 実際に歩いてみると、富士見橋で東雲運河の対岸に渡ると、空気が少し人間らしくなることがわかる。周囲は相変わらず工場と倉庫ばかりであるけれども、高層マンションがところどころに姿を見せ、それなりの数の歩行者を見かけるようになるからである。「ママチャリに乗った買い物帰りの主婦」にも出会った。

 この道路をさらにまっすぐ進むと、右手に有明スポーツセンター、左手に有明テニスの森が現われ、空気はもっと人間らしくなる。そして、道路をそのまま直進し、首都高速湾岸線の高架橋をくぐると、右手に武蔵野大学の有明キャンパスがある。武蔵野大学を右に見ながら左に折れると、まずTOC有明、次にホテルサンルート有明の前を通り、最終的には、りんかい線の国際展示場駅と東京ビッグサイトを結ぶ歩行者専用のスペースに出て、東京ビッグサイトから吐き出された雑踏に合流する。

 残念ながら、東京の西の方に住む私のような者の目には、ゆりかもめの沿線は、どこも非東京的、非人間的に映る。少なくとも、私の知る東京ではないように見えるのである。それでも、有明の周辺は、時間の経過とともに、いくらか人間味を帯びているようにも思われた。

 一般に、人間が住むところは、時間の経過とともに人間と環境の相互作用により、少しずつその姿を変え、人間になじみのあるものになる。

 東京湾に面したエリアは、今のところ、平均的な東京都民にとっては一種の「異界」であり、具体的な用事がないかぎり足を踏み入れることのない場所であろう。しかし、そこは、何十年かののちには人間化して雑然とした街となり、豊洲市場の周辺もまた――私には想像もできないが――現在の築地と同じように人間化された空間へと変化するはずである。そして、このエリアが人間的な空間、東京都民にとって親しみを抱くことができるような空間になるとき、私たちの方はどのように変化しているのか――人間化した豊洲を訪れる機械が私にあるかどうかわからないが――何となく楽しみにしている。