phone call I

「1回目」には応答するが、同じ番号からの「2回目」以降は無視するのが原則

 何かの事情で日中に自宅にいると、セールスの電話を受けることが多い。これを迷惑に感じる人は多いであろう。また、電話によるセールスというのは、21世紀の現在では、古典的――というよりも原始的――な勧誘方法であり、どのくらいの効果が挙がっているのか、電話を受けながら疑問に感じることがないわけではない。ただ、平均すると週に2件か3件の電話がかかってくることは確かであり、その都度、小さな不快感を味わっている。

 私自身は、電話機のディスプレーに表示される電話の発信番号が未知のものでも、だからと言って電話を無視することはなく、一応は電話に出る。ただ、その電話がセールスを目的とするものであることがわかったら、発信番号をその都度「セールス」として登録する。(発信番号に関係なく、すべて「セールス」という同じ名前で登録する。)そして、電話の呼び出し音が鳴り、電話機のディスプレーに「セールス」と表示されたら、その着信は無視することにしている。

 もっとも、同じ業者から2回以上かかってくることは、最近はずいぶん少なくなった。「2回目」以上の割合は、セールスの電話全体の5%くらいではないかと思う。

時間と体力と気分に余裕があるなら:法的(?)に反応する

 問題は、全体の95%を占める「1回目」の呼び出しにどのように対応するかである。もちろん、セールスへの対応に正解などあるわけではないから、好きなようにすればよいのだが、ここでは、対応をさしあたり3つに区分し、メリット/デメリットを考えてみる。

 最初に――あるいは最後に――思い浮かぶのは、セールスの電話に対する「法的」な対応である。

 そもそも、私の電話番号は、個人情報の一種である。そして、電話番号が個人情報であるかぎり、少なくとも日本では、私は、電話番号の使われ方をコントロールする権利を法律(個人情報保護法)によって認められている。名簿業者から購入した何らかの名簿を利用してセールスの電話を私にかけることは、それ自体としては違法ではない。しかし、この名簿に私の電話番号を掲載するに当たり、私は、電話番号の情報がセールスに使われることにあらかじめ同意しているわけではない。そして、個人情報が私自身の同意しないした方で使われた場合、私にはこれを拒否るする権利が法律によって認められているのである。

 だから、セールスの電話がかかってきたときには、セールスの電話をかけてきた業者に対し、(1)私の電話番号を入手した手段を明らかにするよう求めた上で、(2)電話番号のこのような使用に私が同意していないことを伝え、そして、(3)2度と私の電話番号を使わないよう求めればよいことになる。次の記事のように対応するなら、「法的」には完璧なのであろう。

迷惑な勧誘電話 - 悪質セールス撃退と個人情報保護法 - Lucablog

 たしかに、これほど強硬な態度で臨めば、同じ業者からふたたび電話がかかる可能性は、ゼロにかぎりなく近づくはずである。

 しかし、このような対応にはデメリットが2つある。1つは、かかってきた電話を一々この方式で撃退するのが面倒である点、もう1つは、こちらがお説教を始める前に、相手の方が電話を切ってしまう可能性が高い点である。気分的な余裕が十分にあり、かつ、セールスの電話によほど腹を立てているのなら――相手が電話を先に切った場合、こちらから電話をかけなおしてでも――時間と体力を使うのはかまわないが、残念ながら、これは万人向けの対策ではないように思われる。

口をきくのは面倒だが、不快であることを相手に示したいなら:放置する

 ただ、セールスの電話が強い不快感を惹き起こした事実を相手に伝えたいことはある。そのようなときにに有効なのは、電話に出たあと、受話器を放置することである。

 電話をかけてきた業者は、大抵の場合、こちらが実際に聞いているかどうかには関係なく一方的にしゃべり続ける。こちらに相槌を打つ隙を与えず、型通りの話をダラダラと3分近く続けた業者を私は知っている。不思議なことに、このような一方的なおしゃべりが相手に不快感を与えることに気づかず、それどころか、何かが売れるかも知れないと期待しているらしい。

 かつて、同じ不動産の業者が毎日のように電話をかけてきたとき、私は、毎回、電話に出てから受話器をそのまま放置し、勝手にしゃべらせておいた。これが効いたのかどうかわからないが、その業者からは、やがて電話がかかってこなくなった。やはり、受話器の向こうに誰もいない状況で同じことをしゃべり続けるなど、普通の神経では耐えられないであろう。相手に間接的な不快感を与えることで、こちらの気分を相手にわからせることができる可能性は高いように思われる。

時間と体力のロスを最小限に抑え、早く忘れたいなら:すぐに切る

 とはいえ、やはり、セールスの電話がかかってきたら、そして、内容に興味がないのなら、もっともよいのは、「すぐに切る」ことである。この場合の「すぐに切る」とは、文字通り、電話をかけてきた相手がセールスであるとわかったら、1呼吸おいて切ることを意味する。「1呼吸おく」ことが必要であるのは、間違いなく通話を遮断するためである。というのも、(1)電話を切るのがあまりにも早いと、知り合いからの電話をセールスと勘違いして切ってしまう危険があるからであり、また、(2)電話をかけてきた業者の方が、何らかの事故で回線が切れたと判断し、かけなおしてくる危険があるからである。

 私は、かつて、ながいあいだ、セールスの電話がかかってくると、相手の用件を確認した上で、「興味ありません」と謝絶して電話を切ることにしていた。電話をかけてくるのが同じ人間であるかぎり、相手の話を聞いてからこちらが返事するというのがコミュニケーションの本来の姿であると私は考えていた。今でもそう考えている。

 しかし、今から20年近く前、あるセールスの電話を受けてから、私は、セールスの電話についての考え方を少し変えた。

 今でもよく覚えているのだが、それは、そのころ「3分9円」中継電話サービスを開始した東京電力系の東京通信ネットワークが提供する「東京電話」のセールスであった。私が電話に出ると、相手は、こちらの名前も確認せず、東京電話のサービスの説明を始めた。それは、まるでパンフレットを棒読みしているようであった。私は、30秒くらい黙って聞いていたが、少しつらくなってきた。そこで、謝絶しようと思い、「申し訳ないが、興味ありません」と言おうとしたところ、「申し訳……」まで言ったところで、電話をいきなり切られた。セールスの電話に出て、相手から電話を切られたのは、それが最初であった。

 もちろん、このような行動は、商品や業者のブランドイメージを毀損するから、それなりに知られた企業やブランドを名乗ったセールスや勧誘では避けるべきことであるに違いない。実際、「東京電話」に対する私の印象は非常に悪くなり、当時、テレビでさかんに流れていた東京電話のCMを見るたびに、私は、不快なセールスを繰り返し思い出すことになった。


 このような不快な思いを避けるには、セールスの電話は、数秒のうちに黙って切るのがもっともよい。これは、電話をかけてきた相手に対する礼儀という点で問題がないわけではないけれども、こちらの都合や気持ちなどまったく考慮しない相手が与えるかも知れぬ不快感から身を守り、精神の健康を維持することを優先するには、やむをえないことであると私は考えている。