pharmacy-728171_1920

 2016年の春に「かかりつけ薬剤師」という制度が始まったらしい。

今春スタート!薬局で【かかりつけ薬剤師制度】を活用するメリットとは? | EPARKくすりの窓口コラム

 どこかでこのようなニュースを聞いたような気がするが、幸いなことに、今年は病院と薬局に何回か通ったが、昨年は病院にも薬局にも縁がなく、すっかり忘れていたのを、昨日、下のような記事をたまたま目にして思い出したのである。

「かかりつけ薬局あり」は41% 「くすりの適正使用協議会」発表

 この「かかりつけ薬局」は、「かかりつけ医」と同じように、病人の健康管理について重要な役割を担うことになるものらしいということはよくわかる。それでも、私には、どうしても「余計なお世話」と感じられて仕方がない。

 しばらく前、処方箋を持って薬局に行ったときのことである。初めて行くその薬局で、保険証の提示を求められた。薬局で保険証を提示しろと言われたのは、私にとっては初めてのことだった。そこで、「その要求に法的な根拠はあるのか、処方箋に必要な情報はすべて記されているはずだが」と私が切り返すと、処方箋に記された保険証の番号を確認するのに必要であること、したがって、毎回は必要ないが、年に一度はチェックしたいという返事が戻ってきたため、その場で保険証を見せた。(薬局が保険証のコピーを保管するようなことはなく、私が提示した保険証をその場で処方箋と照合し、住所をメモするだけの作業であった。)

 しかし、私は、保険証は提示しても、初めての薬局に行くたびに記入を要求される「問診票」「アンケート」などと呼ばれる書類の記入は、すべて断ることにしている。余計な個人情報を薬局に伝えたくないのである。

 たしかに、薬局が、薬を客に引き渡す前に、客が現在服用している薬の種類、(アレルギーを含む)副作用、そして、既往症に関する情報を把握しなければならないことはよくわかる。したがって、私は、求められれば、必要最低限の情報を口頭で伝えることにしている。(「問診票は書かない」と薬局の窓口で言うと、「何か薬を飲んでいるか」「薬の副作用が出たことはあるか」などを即座に尋ねられることが多い。)

 患者が自分の身体に関する情報を開示する気になるかどうか、そして、薬局の窓口にいる薬剤師から意見やアドバイスをもらったとき、これに耳を傾ける気になるかどうか、つまり、患者が、薬局にいる薬剤師に健康管理の一部を委ねる気になるかどうか……、「かかりつけ薬局」なるものが機能するかどうかは、この点にかかっていると私は考えている。自分の健康というのは、誰にとっても大切なものであるから、「かかりつけ薬局」なる制度が作り上げられたとしても、薬剤師が親身でなかったり、他人事だったり、よそよそしかったりすれば、私たちは、薬剤師に必要最低限の情報しか開示しないであろうし、まして、薬剤師に何かを相談することなど決してないであろう。「かかりつ薬局あり」が41%にとどまっているのには、それなりの理由があると考えるのが自然であり――というよりも、41%は、私の予想よりもかなり高い数値である――「かかりつけ医」が制度化されるとしても、事情は同じであるに違いない。