Sandwich from my childhood

レストランで料理と一緒に出されるパンには、バターもオリーブオイルもつけない

 パンを食べるとき、何もつけないことがある。レストランに行き、西洋料理と一緒にパンを食べるとき、パンは、単独で食べるものとして食卓に出されているのではなく、料理のソースを味わうためのスポンジのようなものとして使うことが期待されている。パンのこのような使用法を考慮し、私自身は、バターやオリーブオイルが食卓にあっても、これらには手をつけないことにしている。

 ただ、もちろん、バターやオリーブオイルとともにパンを食べるのがレストランではマナー違反に当たるわけではない。そもそも、西洋料理のマナーなど、大して厳密ではないし、西洋人自身がマナーに忠実であるわけでもない。よほど高級な料理店での食事でないかぎり、「食べたいように食べる」のが一番である。

パンに直接ジャムだけをつけて食べるのは是か非か

 しかし、私たちが朝食にパンを食べるとき、パンは、主な栄養源と見なされている。したがって、料理に添えられたパンとは、当然、食べ方が異なる。

 とはいえ、少なくとも私自身にとっては、避けるべき食べ方、あるいは、あまりおいしくない食べ方というものがある。私が決してしないことにしているのは、パンにジャムをつけて食べることである。正確に言うなら、パンにバターをつけず、ジャムだけで食べることは、私にとっては禁忌である。

 私は、ジャムと一緒にパンを食べたいときには、必ずバターを一緒につける。私の家族が全員このようにしてパンを食べていたからであり、私もまた、これを見て育ったからである。この意味では、ジャム(だけ)をつけてパンを食べることを避けるのは、習慣にすぎないと言うことができる。だから、小学生のとき、トーストにジャムを直につけて食べている人間を初めて目撃したときには、少なからず驚いた。上半身には何も身につけず、パンツ一丁とマフラーと長靴だけで冬の繁華街を歩いている人間を見たような、何か見てはいけないものを見てしまったような気がしたのを今でも覚えている。

バターを加えるとインパクトの強い味になる

 とはいえ、習慣には関係なく、パンにに(バターなしで)ジャムを直につけて食べると味気ないことは確かである。製造している山崎製パンには申し訳ないが、次の商品は、私にはとてもまずく感じられた。(「ジャムパン」という言葉で私が思い浮かべるのは、バターとジャムがついたパンのことであるが、これは、商品名のとおり、コッペパンの中にイチゴジャムが入っているだけの食品である。)

山崎製パン | 商品情報 | 商品情報[菓子パン] | ジャムパン

 むしろ、(健康的であるかどうかはわからないが、)次の商品の方が、食べものらしい味わいがするように思われる。

山崎製パン | 商品情報 | 商品情報[菓子パン] | コッペパン(ジャム&マーガリン)

 パンにジャムをつけるときにバターが必須であるのは、単なる甘味よりも、塩分と脂肪分が加わった甘味の方が脳を刺戟するからである。これは、次の本に記されているとおりである。

コクと旨味の秘密 (新潮新書) : 伏木 亨 : 本 : Amazon

 もちろん、「ジャムだけ」か「バターとジャム」か、これは、いずれかが正しいという問題ではないのかも知れない。ただ、私の狭い見聞の範囲では、ヨーロッパの食卓では後者の方が普通であり、ジャムを直につけて食べるパンというのは、スコーンのように、すでに脂肪分と塩分が添加されているものに限られるような気がする。

 「ジャムパン」がジャム入りのパンであるというのは、個人的には何ともわびしく感じられるのだが……。