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リオデジャネイロ・パラリンピックがスタートしました。 史上最高のメダルを獲得して感動の渦だったオリンピックから、舞台がパラリンピックへ移ります。 ぜひパラリンピック中継を“NHKで”観たいと思っていま

情報源: 衆議院時代にNHKに問い詰めた「パラリンピックを放映しないなんてもったいない!」思わず熱くなり大炎上もしましたが…|中田宏公式WEBサイト


 上の記事を読み、埋め込まれていた動画を観た。NHKでのパラリンピック大会の放送時間を増やすべきであるというのがその主張である。


 中田宏氏の主張は、パラリンピックをオリンピックと同じように扱うという点に話を限るなら、その通りであると思うけれども、放送時間をこれ以上拡大することには、私は必ずしも賛成しない。

 私は、オリンピックについてもパラリンピックについても、少なくともNHKで放送するに値するものではないと考えている。これらのスポーツ大会をNHKの地上波で放送することは、ある限度を超えると、公共の利益に反するものとなるように思われるからである。そもそも、スポーツ大会というものは、誰もが興味を持つものではないし、興味を持たなければならないものでもない。たとえば、今年の夏のオリンピックについて、放送されたものをすべて観た人は少なくないであろう。しかし、それとともに、私のように、何も観なかった人間もまた、それなりの数になるはずである。

 政治や経済に関するテレビの報道は、社会全体の問題に関する合意形成の前提となる情報を提供するものであるから、基本的に「万人が観るべきもの」である。これに対し、スポーツは、観る者にとっては単なる娯楽であり、「観たければ観る」ものである。NHKの地上波の放送時間を、毎日、何時間にもわたって最優先で占拠しなければならないほどの価値がオリンピックとパラリンピックにあるのかどうか、冷静に考える必要があるように思われる。オリンピックとパラリンピックが開催されているあいだ、世界が休んでいるわけではなく、事件が少なくなるわけでもない。優先的に報道すべきことは、いくらでもあるはずなのである。

 もちろん、たとえば、演歌に興味がない者にとって、NHKが放送する歌番組は邪魔であるかも知れない。しかし、演歌が放送されるのは、せいぜい週に1回、45分間にすぎない。歌番組がNHKの放送の質に何か悪影響を与えるとしても、それは、目に見えないほど小さなものである。少なくとも、普段から放送される番組が演歌のせいで休止になったり、放送時間が変更されたりすることはない。

 それでも、今回のオリンピックには、まだ救いがあった。ブラジルと日本のあいだの時差が12時間あり、現地の昼間が日本の夜に当たっていたからである。番組編成に与えるインパクトは、比較的小さかったはずである。

 これに対し、2020年の東京オリンピックとパラリンピックでは、時差がない。つまり、昼間に行われる競技は、昼間に放送される。そのとき、どのくらいの量の番組が蹴散らされ、どのくらいの量のニュースが報道されぬまま終わり、そのせいで、社会全体の利益がどのくらい損なわれることになるのか、これは、あまり考えたくない問題である。

 オリンピックとパラリンピックの放送が不要であると考えるのと同じ理由によって、高校野球についても、NHKで放送する価値はないと私は考えている。(少なくとも、私自身は、記憶にあるかぎりでは、高校野球をテレビで観たことがない。)

 公共の電波を占領することが許されるスポーツがあるとするなら、それは、プロスポーツだけである。たとえば、相撲、プロ野球、プロサッカーなどは、本質的に「見せる」こと、つまり、観客がいることを前提とするものだからである。