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知事にチャンスを与えることは必要

 今日(2017年7月2日)、都議会議員選挙があった。私は、期日前投票を済ませており、今日は投票所には行かなかった。

 選挙の結果は、明日には確定するであろうが、速報の範囲では、特に驚くようなことは何も起こらなかった。

 「知事は就任してから1年のあいだ、何もしなかったじゃないか」と言う人がいるかも知れないが、今回の選挙前の都議会の構成では、都知事の意向が政策の大半に正常な形で反映されるはずはない。だから、都知事が去年の知事選で公約として掲げていた政策を残りの任期のあいだに実現するかどうかを見きわめるためには、少なくとも一度は知事の与党が過半数を占めるような議会の構成を作り、知事にチャンスを与えることが必要であったと私は考えている。

 公約が実現されなかったり、都民の生活環境が悪化したりするようなら、次回の都知事選挙で現職に投票しなければよいだけの話である。投票というのは、白紙委任状を渡すことではなく、期限つきの信認を与えることにすぎないのである。

1970年代の「革新系」の候補者たちの亡霊かと思う

 とはいえ、今回の選挙で驚いた――というよりも呆れた――ことがあった。それは、候補者たち、特に民進党、共産党、さらに、これによりも左の過激派系(?)の候補者たちのわかりやすい「先祖返り」である。

 たしかに、現在の自民党政権には、冷静に吟味されるべき問題が少なくない。しかし、私には、たとえば、いわゆる「加計学園問題」の本質がどこにあるのか、何が明らかにされるべきであるのか、すべての国民が理解しているようには思えない。実際、たしかに今回の選挙で自民党は大敗したけれども、だからと言って、国政のレベルで自民党を追求していた野党が勝利したわけでもないのである。私たちは、この点を勘違いしてはいけないと思う。

 ただ、自民党や政権の問題はすべて、基本的に国政の問題である。それは、都政の問題ではなく、都議会の問題でもない。東京には東京なりの、東京に固有のローカルな問題が無数にある。高齢化の問題、待機児童の問題、オリンピックの費用の問題、さらに、こまごまとした諸問題……。このような諸問題の解決策こそ、候補者たちによって大声で語られるべきであった。

 ところが、私の見るところ、民進党や共産党、そして、過激派系(?)などは、都政のこまごまとした問題には目もくれなかった。東京は、日本でもっとも大きな都市であり、当然、この都市が抱えるローカルな問題は、日本中のどの都市よりも深刻である。それにもかかわらず、これらの政党の候補者たちは、自民党批判、政権批判に明け暮れたように見える。

 特に、「憲法九条」の問題が都政と何の関係があるのが、共産党は、誰にでも納得することができるよう明らかにすべきである。都政と何の関係もないのに、九条を話題にして有権者の注意を惹こうとしているのであるなら、それは、都民を愚弄しているのと同じことである。

地方政治の空洞化

 しかし、これは、左翼系の特に目新しい戦術ではない。

 1970年代から80年代、私がまだ選挙権を持っていなかったころ、地方議会の選挙というのは、しかし、これと似たような状況であった。本来なら重要なテーマになるはずのローカルな問題はすべて無視され、特に「革新系」の候補者たちは、選挙期間中、その時点での自民党と政権の批判を飽くことなく続けていた。都政と関係のないテーマについて自説を連呼し続けて議席が獲得できると候補者たちが信じていることが、私には不思議でならなかった。

 そして、今回の都議会議員選挙では、同じような光景がいたるところに見出された。左翼系の選挙戦術の大規模な先祖返りが起ったのであり、私は、40年前の選挙の候補者の亡霊が選挙を戦っているかのような感じに襲われた。

 自民党系の地方議員のあり方に深刻な問題があり、これは、それ自体として解決されねばならない。ただ、しばらく前から、都議会自民党の議員の資質やガバナンスの問題が批判されているけれども、これは、地方議会の空洞化、地方議会選挙をの空洞化、地方政治の空洞化、そして、民主主義の空洞化の「結果」にすぎない。そして、このような一連の空洞化の「原因」は、東京に関するかぎり、やはり、都政の問題には目もくれず、自民党と政権の批判に明け暮れてきた「革新系」の候補者であり、「革新系」の勢力であったように思われるのである。

 今回の選挙では、幸いなことに、今の時点での情報に従うなら、民進党や共産党や過激派が議席を増やすようなことはなかったようである。これらの勢力には、議席を増やす何の理由もない以上、これは当然の結果であり、東京の有権者の選択は、全体として穏当なものであったと言うことができる。

 都政の問題に関して現実的な政策を提示し、その上で議席を増やすのなら、私には何の文句もないが、今回のような粗末な選挙によってこれらの勢力の議席が増えるようなことがあったら、地方議会選挙の堕落は取り返しがつかないことになるところであった。今回のような不毛で低級な選挙は、二度と見たくないものである。