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政府が期間まで指定するとは

 「クールビズ」(cool biz) というのは、夏期の職場での軽装を指す和製英語で、環境省の主導で2005年に始まったものである。

 夏に軽装で仕事し、冷房の温度を高めに設定することにより、電気の使用量が減り、環境への負荷も軽減されるということであり、表面的に考えるなら、これは望ましいことであるには違いない。

 しかし、政府は、クールビズの期間、夏期の冷房の温度設定、許容される服装まで指定している。衣服というのは、各人が身体に合わせて着用するものであり、一人ひとりが状況を考慮して適切な服装を選択すべきものである。政府の指定は、明らかなお節介でありパターナリズムである。

会社員の服装は驚くほど画一的

 もっとも、街を歩いていると、政府がこれほどお節介なのには理由があるようにも思われてくる。服装に無頓着なのか、それとも、服装に自分の好みを反映させ、職場で浮くことを恐れているのか、大半のサラリーマンが没個性的で画一的な服装に身を包んでいるのである。

 気温が25度くらいなら、街を歩いているサラリーマンの大半は、ネクタイを外しただけのスーツ姿である。30度を超えると、ジャケットを脱ぐことになる。ノーネクタイを前提にシャツにボタンダウンのものにしているサラリーマンが若干いるけれども、大半は、「ただネクタイを外しただけ」「ただジャケットを着ていないだけ」である。

 これらを「クールビズ」と呼ぶことができるのかどうか、私自身は大いに疑問に感じるけれども、多くの民間企業では、服装の許容範囲が狭く、スーツが事実上の制服になっているのであろう。この点を考慮するなら、「クールビズ」がおざなりなものとなるのは、無理のないことであるかも知れない。

 なお、スーツが制服と見なされていることは、普段着について語るとき、「私服」という――私には違和感のある――言葉が使われていることによって明らかである。(「私服」は「制服」の反対語である。)

身体と季節に合った服装を考える習慣を身につけるべき

 今のところ、クールビズは――よほど体型がよい男性でないかぎり――だらしないだけの格好にすぎないように見える。

 政府がクールビズを本当の意味において「クール」なものにすることを望むのなら、何よりもまず没個性的で画一的な服装をやめさせ、どのような状況のもとで何を着るか、みずから考える習慣をサラリーマンに身につけさせるよう促すべきであろう。