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立食パーティーでは何も食べないと決めた

 私は、立食パーティなるものが苦手である。理由は2つある。

 第一に、誰かと話をしていると食べることができず、食べてばかりいると、誰とも話をすることができないからである。

 第二に、他の参加者と自然な形でコミュニケーションを成り立たせるのに苦労するからである。

 この数年、私は、立食パーティーに参加せざるをえなくなったら、基本的には何も食べず、他人と話すことに時間のすべてを使うことにしている。

 上の第一の問題は、「立食パーティーでは何も食べない」と割り切ることにより解決する。飲み物――私は酒が飲めないから、当然、アルコールの入っていないもの――を片手に会場を歩き回り、ひたすら誰かと話す。私の場合、立食パーティーは基本的にすべて、「仕事」または「仕事の延長」であるから、会場で誰かとコミュニケーションすることは、職場での居心地や仕事のやりやすさに直に影響を与える。だから、本当は、何かを食べている余裕など――まして、酔っ払っている余裕など――もともとなかったと言うことができる。

知らない者ばかりの立食パーティーで話し相手を見つける困難

 しかし、さらに厄介なのは、上の第二の問題、つまり、他の参加者と自然な形でコミュニケーションを成り立たせるのが難しいという点である。この困難は、さらに2つに区分することができるように思われる。

 第一に、参加者に知り合いがいないか、あるいは、ほとんどまったくいない場合、知らない人に声をかけて話することは非常に困難である。この困難を克服する数少ない方法として考えられるのは、(参加者が名札をつけているなら、)名札を見て、コミュニケーションが成り立ちそうな相手を探すことである。あるいは、ホストあるいは主賓に話しかけるのもまた、1つの選択肢である。それでも、参加者の大半が小さなグループを作り、しかも、あなたがそのどれにも属していなければ、あなたは、身の置きどころのない気持ちになるかもしれない。

同時に2人以上と、明確な始まりも終わりもなく会話する困難

 第二に、立食パーティーでは、参加者が自由に移動するため、パーティーにおけるコミュニケーションは、一対一での安定した対話ではなく、3人以上の当事者による――また、当事者の交替の可能性を含む――不安定な雑談とならざるをえない。しかし、このタイプのコミュニケーションには、これを得意とする者と苦手とする者がいるはずである。(私は、大の苦手である。)

 この困難を克服するには、とにかく――音量を抑えながら――できるかぎりたくさん話し続けることしかない。私の乏しい経験の範囲では、グループで話しているときには、話した言葉が多いほど、誰か相手を見つけて話し続けることができる場合が多いように思われる。話し続けているうちに、目の前の相手が交替するかもしれないが、相手を見て、ときには質問しながら、途切れることなく話を続けることは、立食パーティーにおいて基本的な戦術であろう。

 もちろん、明確な脈絡もなく、とりとめのない話題について、短時間で入れ替わる相手とひたすらしゃべり続けるなど、知的な人間のすることではないように見えるかもしれない。また、(私を含め、)このような会話に慣れていない場合、疲れることは確かである。

 それでも、パーティに楽しさではなく実利を期待するのなら、私たちには、覚悟を決めて会話に飛び込んで行く以外に道はないように思われるのである。