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 ある1年間にある金額以上の商品を購入した客を、次の1年間、何らかの形で「優待」する小売店は――通販でも、現実の店舗でも――少なくない。それは、割引であったり、ポイントの付与であったり、何らかの――予約を優先的に受け付けたり、イベントに招待したりする――優遇措置であったりする。同じようなことは、小売店ばかりではなく、航空会社では、さらに大規模な形で行われている。もちろん、これは、忠実な客を囲い込むための戦術である。2009年のアメリカ映画「マイレージ、マイライフ」でジョージ・クルーニーが演じる主人公は、あるシーンで、マイルをためられないところにはカネを落とさないこと、また、マイルをためることがそれ自体として目的であることを公言している。これは、「優待」に引きずられた行動の極端な例である。(なお、主人公が求める「優待」の内容は、ストーリーに関係あるから、ここには記さない。)


 ただ、このような試みがどのくらい成功しているのか知らないけれども、私自身は、このような優待にはあまり気持ちのよくないものを感じる。というのも、購入した商品の合計金額に応じて客の扱いを変えるこのシステムが前提としているのは、ある小売店にとっての私の価値が私がその店で過去に「落とした」金額のみによって測られうるという了解だからである。

 私がある店で商品をたくさんの商品を購入し、その合計金額が多ければ、その店は、さらに多くの商品を購入する機会を私に提供する。(これが「優待」の意味である。)これは、合理的な措置であるように見える。たしかに、直近の1年間にたくさんの商品を買った客が次の1年間に行動を大きく変える可能性は低いであろう。

 しかし、私自身は、購入金額の合計によって客をA、B、Cなどに区分する小売店には違和感を覚える。忠誠心を競わせられているような気がするからである。あるいは、この店で買いものしないと客として扱わないと脅されているように感じられるからである。

 実際、航空会社、ホテル、百貨店などを除くと、このような仕方で客を盛大に選別しているのは、私の狭い経験の範囲では、どちらかと言うと、「高級感においていくらか劣る小売店」に多いように思われる。おそらく、このシステムは、選別を歓迎するタイプの客を引き寄せるのであろう。

 この点において、私自身はAmazonを評価する。Amazonは、他の多くのECサイトとは異なり、買い物の金額によって客を選別しないからである。これは、実に気持ちのよいシステムである。過去1年間に購入した商品の合計が100万円であっても、あるいは100円でもあっても、次にAmazon何かを購入する場面では、対応に違いはない。専用の窓口があるわけでもなく、何かの優先予約ができるわけでもない。たしかに、「Amazonプライム」に登録した客は優遇されることがあるけれども、これは、あらかじめ支払われた年会費に対する対価としてのサービスであり、過去の購入行動に現れた「忠誠心」への御褒美ではないのである。同じように、「ブラックカード」と呼ばれるクレジットカードを所持していると、それなりのサービスを受けることができるようであるが、これは、途方もなく高額な年会費の対価としての(ある意味では過剰な)サービスである。サービスに魅力を感じなければ、年会費を支払う必要はないし、カードを持つ必要もないのである。

 私自身は、何年も通い続けている少数の店を別として、ポイントカードを作らないし、ポイントをためるつもりもない。店に囲い込まれ、忠誠心を煽られると、商品の購入に関する判断が汚れるように、そして、自分が堕落したようなに感じられるからである。