Fishing Hole, Yellowstone National Park, Wyoming, USA.


ヘリ利用の中国人女性のエベレスト登頂を認定


 以下は、登山には何の興味もない人間による、思いつきのような極論である。

 上に掲げたのは、2014年、エベレストに登頂しようとした中国人の女性登山家がヘリコプターを使ったことに関連する記事である。ネパール政府は、この中国人の登頂の認定を留保していたが、これを正式に認定することになったというのが記事の内容である。

 少なくとも今のところはまだ、ヘリコプターのみで山頂まで行くことができない。エベレストの山頂は、足を使わなければ辿りつくことができない場所であるから、登山にはかけがえのない価値があると言うことができる。

 しかし、ヘリコプターで行けるところまではヘリコプターで行くという選択は、地元の住民の感情をいたく傷つけることは間違いないが、許しがたいほどのことではないと思う。ヘリコプターを使った登山が一般的になれば、エベレストの標高全体のうち、上から4分の1くらいが本当の意味における登山の対象となり、下の4分の3は観光地になるであろうし、それはそれで、やむをえないことであろう。

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 この観点から眺めるなら、たとえば富士山に登ることには、もはや積極的な意味は何もないように見える。というのも、富士山の山頂までは、ヘリコプターでも行くことができるし、自動車でも行くことができるからである。(人間ではなく生活物資を運ぶための道路が山頂まで整備されている。)山頂に辿りつきさえすればよいのなら、富士山にあえて足で登ることの意味は、必ずしも明瞭ではないことになる。

 想定されるのは、「足を動かしてこそ登山だ」「周囲の眺めを楽しむ」などの説明であろうが、これら2つが理由なら、富士山の代りに尾瀬に行ってもかまわないし、眺めのいいスポーツジムでトレッドミルの上を歩いてもかまわないことになる。ヘリコプターでも自動車でもなく、足で富士山の山頂を目指す理由としてもっとも説得力があるのは、「乗り物を使うカネがないから」ということになってしまうのであろうか。

 現代では、富士山に足で登るのは、釣り堀で魚を釣るのと同じと言うことができる。魚を手に入れることが目的なら、釣り堀での魚の捕獲など時間とエネルギーの無駄遣いであり、魚屋かスーパーの魚売り場に行くのが合理的である。富士山の山頂に辿りつきたいのなら、何も足を使う必要はない。何のために山に登るのか、登山とは何なのか、一度よく考えてみることが必要であるように思われる。